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『維新前夜 スフィンクスと34人のサムライ』
 2月に読んだ本の、三月にご紹介。

『維新前夜 スフィンクスと34人のサムライ』鈴木明 小学館
維新前夜

 またまたどどーん。

 この写真は、今から140年ぐらい前に、鎖国を望む幕府に使わされてフランスに向かう使節団が、途中のスフィンクスの前で記念写真を撮ったものです。珍しく、写真家も映っている侍たちの素生やその後もはっきりわかっているものです。

 膨大な資料から34人の使節団の個性や考えを書き起こし、小説風に仕上がっていておもしろく読めます。

 作者が書きたかったのは、開国か・鎖国かに揺れ動く日本人の中で、優れた国際感覚を持っていて、また日本人として誇りを持って職務を遂行した侍たちのたくましさです。

 34人は身分も違う、年齢や考えも全く違う者たちでした。
 そんな彼らが蒸気船に乗り、産業文明を目の当たりにし、異国の地を踏み、内戦やイギリスとの戦いで落ちぶれた清を見、カルチャーショックの連続の中で、世界情勢や日本が置かれている立場を痛感していきます。そして、日本の環境の美しさや文化の高さを再発見していきます。

 結局、彼らは「日本を守るためには開国するしかない」と幕府に進言する訳ですが、不平等条約を結ばれることも承知で、また清の二の舞を踏む可能性もあるわけで、非常に危険な綱渡り的な決断の連続を当時の日本人はしてきたのです。

 この時代は一人ひとりが真剣に日本の明日を考え、そのために命を投げ出すほど奔走していたので、ピリピリする緊迫感とものすごいエネルギーの渦巻きを感じます。

 小説風とは言え、作者の独りよがりな解釈ではなく、緻密な調査から人物のセリフなどが生まれていて、だからこそすごくこの使節団の驚きや緊迫感や迷いなんかが伝わってきます。

 その後、34人の中の一人は旅の途中で病に倒れてしまうのですが、帰国した者たちはそれぞれ政界や経済界や医界などへ散ってゆき、その後の日本の基礎を築く重要な働きをしたとのことです。

 
 龍馬伝で盛り上がってる高知県、まだまだ幕末や龍馬関係の本をいっぱい読みたいです
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